| 「政民合同會議」活動報告 |
「北朝鮮情勢を読む」 ![]() 平成21年8月5日 講師/武貞 秀士 防衛省防衛研究所統括研究官 |
8月4日、クリントン元大統領が訪朝し、金正日総書記と会談を行った。これは元大統領の訪朝にこだわった北朝鮮が主導したものであり、6ヶ国協議の関係国には直前まで極秘だった。「拘束されていた米国の女性ジャーナリスト2名の帰国」が表向きの理由だが、実際は今後の米朝直接対話について、具体的な話し合いが行われただろう。政策にブレがあったブッシュ政権の後、オバマ政権がボスワース代表を指名して、北朝鮮との対話を重視する姿勢を見せた。それに合わせ、北朝鮮はミサイルと核の実験を立て続けに行い、「核保有国」として対等の立場で米朝交渉再開を目論んで、クリントン氏を招聘した。これは金総書記の画いたシナリオである。米国は元大統領が金正日総書記の健康状態を直接確認でき、自国民保護の責任を果たせた。 最近、テポドン2号、核実験など北朝鮮の強硬な姿勢が目立つが、これは後継者問題が絡んでいる。核兵器開発は金正日総書記が指導してきたものなので、国内外に総書記の存在感をアピールし、後継者への継承をスムーズにしたいだろう。金総書記の健康状態をかんがみて、時間がかかりすぎる6ヶ国協議は避けて、オバマ政権下で米朝直接交渉を再開したいだろう。 2003年8月以降の6か国協議の過程で、プルトニウム型核開発の続行が困難であることを北朝鮮は悟った。そして、2003年から04年頃に、北朝鮮は2つの戦略的重点を決めたのではないか。1つは核開発を外国との協力で行うこと(アウトソーシング)、もう1つは北朝鮮と外国との2国間関係をいくつか同時並行して強化することである。パキスタン、ミャンマー、シリア、イランなど各国と個別に緊密な軍事協力を行えば、思いがけない方向から技術や情報が回ってくるかもしれない。例えば、北朝鮮がイランやミャンマーと個別に軍事協力を推進すれば、中国がイランとミャンマーに供与した軍事技術が北朝鮮に入るかも知れない。ミサイルの誘導技術、固体燃料ロケット、ウラン濃縮技術、遠心分離機設計技術が欲しい北朝鮮が対外活動を多様化した。 中国は北朝鮮の核兵器開発をどう見ているか。最近の中国は、鉱物資源の産出国である北朝鮮、ミャンマー、モンゴルなどに接近している。中国と北朝鮮は、軍事協定を必要としない「唇と歯のような関係」である。中国は北朝鮮の無煙炭、鉄鉱石、ニッケル、マグネサイトなどの地下資源に期待して、北朝鮮の核には厳しいことは言わない。北朝鮮との国境貿易は急増し、2008年は前年度の41パーセント増である。北朝鮮の核実験後は、一層、中朝貿易は増えている。中国が「北朝鮮への影響力がある」と言わないのは、国際社会から北朝鮮の核開発への責任を問われるからなのである。 北朝鮮の核開発の目的は何か。国是は韓国と「自主的平和統一」を果たすことで、そのために米国東部に届く核兵器が必要だ。朝鮮半島有事で米国を脅し、米国の朝鮮半島への軍事介入を阻止して、通常戦力で北主導の朝鮮半島統一を実現する戦略である。そのためには、南北朝鮮間の宥和、米朝不可侵協定と在日米軍撤退、大陸間弾道弾の3点が必要になる。統一のときまで核放棄はないのである。 関係諸国は北朝鮮の核を統一のための核と見抜いた上で、朝鮮半島の悪夢のシナリオを避けるためにも、日本が国際社会での役割を考えるときがきている。 (文責/高村 時局心話會事務局) |