「政民合同會議」活動報告


平成22年1月13日
講師/水野 和夫 UFJ証券チーフエコノミスト
植草 一秀 政治経済学者   

 

 「2010年の経済・金融の見通し−21世紀は陸と海のたたかい−」

講師/水野 和夫  三菱UFJ証券株式会社 チーフエコノミスト


 16世紀以来20世紀中頃までのグローバル化は、ヨーロッパの価値観に基づいて、欧米世界の10億人(世界人口の15%)の成長を目指すものだった。だが今のグローバル化は残り85%を豊かにできるという期待の上に成り立っている。

 先進国の1人当たりGDPは3万〜4万ドルだが、成長国である中国やインドはその5%程度しかない。先進国と同じ規模の需要を成長国に求めるとすれば、20倍の市場が必要となり、資源価格が高騰し今までのような「資源を安く仕入れて、工業製品を高く売る」システムはもはや維持できない。

 日本は高付加価値化商品、英米は金融商品の開発で成長を維持してきたものの、9・11やソマリア海賊によって空と海の安全が消滅、リーマンショックに始まる経営破綻で「金融」も安全ではなくなった。物価を下げなければ実質GDPは上がらない。デフレの始まりである。世界的に投資機会が減り、中でも日本の金利の下がり方は著しい。

 従来は「海の国(欧米)」を相手に資源国(陸の国)から化石燃料を大量に輸入(消費)して輸出を行うのが成功パターンだったが、1990年代から原油が高騰し、「海の国」が築いてきた資本主義は動揺しつつある。今後は「陸の国(中国・ロシア)」を視野に入れて燃料消費を抑える方向に転換する必要がある。そのためにも東アジア共同体の設立は重要だ。

 現在日本の景気は少し上向いているが、安い原油を使って製造できるのは今年3月頃までで、その後は二番底が危惧される。

                 

 「民主党の経済政策の是非を問う」
講師/植草  一秀  政治経済学者

 

 昨年8月の総選挙で政権交代が実現し、日本の政局はパラダイムシフトを迎えた。「官僚主権構造の打破」「市場原理主義の抑制」「対米隷属外交からの脱却」「警察・メディア等の政治利用排除」「日本郵政の経営刷新」などが政権交代の大義としてあげられる。

 これらはいずれも自民党時代、ことに小泉・竹中政権の残した「緊縮財政」「格差容認」「官僚体質の温存」「対米依存」「公権力濫用」といった大罪の是正というべきものである。バブル崩壊後4回の株価暴落を迎えたが、株価の長期低迷は場当たり・先送りの金融危機対策に原因があり、日本のGDPも低迷したままだ。

 前年の麻生政権による大型財政政策を受けて多難なスタートを切った鳩山政権だが、2010年度の予算編成において、ひとまず二番底のリスクを回避したといえるだろう。

 鳩山政権の成長戦略は簡略なものだが、日本の民間経済は自律的な生産性上昇能力を備えているため、政府が手取り足取り介入する必要はない。

 菅財相がデフレ宣言を行ったが、背景に財政政策を抑制し、日銀に責任を転嫁しようとする財務省の思惑がある。ゼロ金利で追加金融政策を打ち出しても効果はない。他方、財政支出の中身を見直す、というこれまでなかった姿勢が打ち出されている。アメリカの景気回復が順調なら日本でも緩やかな回復が見込めるが、年後半は金利の上昇やドル下落、米経済の再悪化の影響などによる波乱も予想される。