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日本を取り巻く国際情勢 第294号   2010年9月2日発行

   山本善心の週刊「木曜コラム」
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    今週のテーマ
    中国海軍の暴走に米軍はどう動くか

                      時局心話會 代表 山本善心

                                                  


 このところ東シナ海における中国海軍の暴走が周辺諸国を脅かしている。中国は海軍力を異様に増強し、周辺諸国の海域に不法侵入するなど海洋支配の動きを強めている。東アジア周辺諸国は、中国海軍の急速な近代化がほどなく米軍の優位を脅かしかねないと懸念していた。16日、米国国務省は中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国が軍事力の拡大を外交利用することに懸念を表明する。
 
 この数カ月、わが国周辺海域では中国海軍による領海侵犯が頻繁に起こっていた。今年4月、沖縄・宮古島間を中国海軍艦隊は近代化装備をアピールするかのように航行。しかし、それ以上に中国のキロ級潜水艦浮上に注目が集まる。国際法は、公海上で潜行が許されるのは潜水艦のみだ。いまや中国潜水艦の技術力向上は目覚ましく、日本近海の隠密行動や米空母を撃沈する可能性にも言及している。

 今後、中国ミサイル潜水艦は日本近海に40隻以上を配備完了するとみられている。これまで米軍は空母戦闘群を急派することで急場をしのいで来たが、中国海軍が保有するキロ級や元級の潜水艦が優位に立てば、米空母は近付けない。日本を取り巻く海の攻防は「安全な海」から「緊張の海」に変わりつつある。

東シナ海は平和と友好の海か


 中国の海洋進出は共産党、解放軍、胡錦濤政府ならびに人民が後押しする国家戦略であった。4月に中国海軍艦載ヘリが日本の護衛艦に向かって2回も異常接近して挑発行為を行っている。これは中国海軍の実践的な対日訓練とも言えよう。さらに、5月には中国政府船が海上保安庁測量船の調査活動を追尾し、威嚇妨害した。そのほかにも中国艦船や潜水艦が日本近海を横行し、何度も計画的にわが国艦船に挑発を繰り返している。すでに日中戦争の前哨戦は始まったと見てよい。

 しかし、これら中国側による非友好的な暴挙に対して外務省は形式的な遺憾の意を表明するにとどまり、外交の機能不全を露呈する始末だ。中国側は「東シナ海を真の平和、協力、友好の海」にしようと鳩山由紀夫元首相の言葉を引用し、「日本側こそ中国軍の遠洋進出に慣れるべきだ」と傲慢なコメントを公言した。

 わが国外交は、中国がいかなる危険な行動をとってもこれまですべて先送り、事なかれ主義で通してきた。このままこうした姿勢が続けば、日本側はさらにじりじりと後退を余儀なくされ、中国の勝手な主張と行動がまかり通ることになろう。中国の暴走は「自由と民主主義、法治と人権」の民主国家にとって許し難き存在である。

南沙で中国の実効支配が進行中 

 中国やフィリピン、ベトナムが領有を主張する南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で、中国漁船の実効支配が進んでいる。4月末、中国は南シナ海で操業する中国漁船を保護する名目で漁業監視船「漁政311号」を現地に派遣。南シナ海ではマレーシア海軍の戦闘機と艦艇が出動し、約18時間にわたる攻防の末、中国監視船が追い出された。中国は東シナ海のみならず、南シナ海でも領有権を主張し、トラブルを頻発させている。

 5月12日以降、中国漁船3隻が外国の海軍艦艇に拿捕され漁民ら28人が連行された。22年前、ベトナムはスプラトリー(南沙)を巡る攻防で中国海軍に一蹴されている。ここに来て、中国の軍拡に不信感を抱く周辺諸国も軍備増強に力を入れ始めている。各国の軍事力が均衡すれば、結果として東アジアは平和な海になる。
 
中国の脅威に東アジアが軍備増強で結束

これらの増大する中国海軍の脅威に対し、ベトナムはロシアから6隻のキロ級潜水艦を購入し、わが国の海上自衛隊に教育訓練、攻撃技術、艦船修理などで指導を求める方針だ。その他インドネシアをはじめとする東アジア諸国の軍備増強が急がれている。

半面、中国はインド洋に面したパキスタン、スリランカ、ミャンマーなどの港湾建設に資金と技術を提供した。そこでは、自国潜水艦や艦艇33隻が接岸できる世界最大の海軍基地の建設が計画中だ。これら中国の軍事拠点づくりに備え、今、米豪は中国の脅威と軍拡にどう対処するかが問われていよう。

日本の外交無策に危機感を強める東アジア


 これまでいかにわが国近海で中国艦艇が横行しようとも東アジア諸国は米軍が安全を保ってくれるという神話を信じてきた。しかし、米軍が動かず中国の暴走が野放しにされたまま、さらに悲しいかな、東アジア諸国が期待の星と仰ぐわが国政府が中国を宗主国と崇め、隷属外交を展開している体たらくとあれば、中国に妥協せざるを得ないと考える国も出てこよう。

 東ガス田の問題ですでにわが国はアジア諸国に対して外交失政を露呈した。米国が頼りにならず、わが国が中国への従属外交を続けている姿勢をみて、東アジア諸国は自国防衛でやるしかないと危機感を強めている。

 米国が中国の海洋覇権確立を放置すれば、台湾は侵略され、日本と韓国は中国の属国になる。そうなれば、米国のこれまで築いてきた東アジアの影響力は奪い取られ、米軍基地は撤去され、制海権も放棄することになろう。しかし、ここに来て、米国の対中政策は周辺国を巻き込む「封じ込め政策」で中国への圧力を強めている。

米、対中「封じ込め政策」で巻き返し


 米国の対中政策はこれまでの静観姿勢から積極的な姿勢に転じつつあり、対中抑止力と影響力の確保を狙っている。一方、中国は大陸間弾道ミサイルや対艦ミサイルの開発を急ピッチで進め、米軍阻止を目論む。米海軍やオハイオ級改良型潜水艦3隻を配備したのは、中国海軍への暴走に対する警告であり、抑止力であろう。世界で最も怖いのは年中どこかで戦争を行っている軍事大国・米国が動き出した時である。

 今回配備された潜水艦は米海軍の最大最強の戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)である。このミサイル潜水艦にはトマホーク発射筒22基、1隻あたり7発、1隻154発のトマホーク巡航ミサイルを搭載して射程1800キロの地上に向けた攻撃が可能だ。今後米軍はこれらを中国の近海海域に浮上させよう。さらにインド洋から台湾海峡、日本近海の有事に域内各国との協力関係を強化しながら中国包囲網作戦を敷き始めた。つまり、注目すべきことは米軍のアジア回帰である。

 しかし、中国海軍は空母艦隊と米軍基地をミサイルの照準に入れることで、米艦隊の西太平洋入りを阻止する構えだ。中国ミサイルは米空母が近海に出動するのを防ぐのが目的である。中国はさらなる軍事拡大をエスカレートさせ、事実上日米安保の無力化を狙ってこよう。

核保有・核使用の時代


 米国は有事の際にはかつての広島・長崎での原爆投下のような思い切った手段をとる国である。米国は、東アジアの権益を中国に奪われることは考えていない。しかし、中国は日本、台湾、ベトナムからインド洋に至る第一列島線、日本からグアム、サイパンに至る第二列島線まで米海軍が近づけない囲い込み作戦を達成しつつある。

 中国はすでにミサイル潜水艦40隻の配備を完了した。これは米空母が近付けない戦略である。逆に中国は第二列島線の制海権確保に通常型空母を2隻建造する予定だ。このまま放置すれば太平洋は中国の制海権になるはずであった。しかしながら、米軍は太平洋海域に軍事力を増強し、中国への抑止力となる構えだ。

 しかし世界の警察官を自負する米軍はアフガニスタン戦争で苦戦している。イラクから兵員を移動させても終結には程遠い。アフガニスタン戦争が複雑な様相を呈しているのは、アルカイダをはじめ世界中のテロリストが核兵器を手に入れようとしていることだ。さらに中国は、今後140カ所に原子力発電所をつくる予定であると聞いている。

最終戦争は核戦争の可能性も


 オバマ大統領は「核兵器を世界から無くそう」と国連で訴えたが、アフガニスタンにてこずり、アジアでは中国に挑戦を突きつけられている。米国は大きな犠牲と財政赤字に苦しみながら国家存亡の危機を迎えていよう。米軍がアフガンで敗北することは許されないが、最悪の事態になれば窮余の一策としてアフガンで核兵器を使う可能性がある。

 先の大戦で米国が広島・長崎に落とした原爆で事実上戦争は終結した。あの投下がなければさらに20万人以上の被害者が出たと米国側は主張するが、それは米国側の言い訳に過ぎない。しかし、当時イギリスもソ連も米国が原爆を日本に投下するなどあり得ないと考えていた。人間や国家には過去の成功例を繰り返す習性がある。中国の無制限な軍事力増大によって米国の権益が犯されれば、この東アジアに再び核が使用されるという問題の浮上を否定できようか。

次回は9月9日(木)
 
293「日韓併合100年」で暴走する仕掛人
292「李登輝元台湾総統の講演」
291「日台は生命共同体」
290「日台間で経済協力促進を」
289「浮き彫りに成りつつある民主党の正体」
288「成長なき日本経済の課題」
287「日教組の政治とカネ」
286「揺らぐ日本経済の大黒柱」
285「日本経済の回復案」
284「左翼民主党政権の誕生」
283「軍拡中国と東アジア情勢」
282「わが国周辺が危ない!」
281「政官に潜伏する工作員」
280「朝鮮半島の史実を検証(後編)」
279「朝鮮半島の史実を検証(中編)」
278「朝鮮半島の史実を検証(前編)」
277「少数の反米勢力に振り回される米軍基地問題」
276「台湾研修会 自由時報呉阿明氏」
275「台湾研修会 李登輝氏講演(後編)」
274「台湾研修会 李登輝氏講演(前編)」
273「日台の新しい船出」
272「大国日本の復活に向けて」
271「露呈した台湾吸収のシナリオ」
270「米中G2の行方」
269「東アジアの防衛〜軍拡を続ける中国の脅威〜」
268「外国人の参政権付与に潜む国家解体の危機」
267「2010年の中台経済」
266「いのちを守りたい」演説に潜む危機
265「検察VS小沢」
264「鳩山政治の限界」
263「長寿とガラパゴス現象」
262「2010年意向の経済環境」
261「民主党左翼政権への蠢き」
260「天皇制廃止論」
259「伊藤博文暗殺から100年」
258「台湾のアジア外交」
257「鳩山政権の景気刺激策」
256「民主党の友愛外交」
255「岡田外相の歴史発言」
254「グアム米軍基地を視察」
253「古代ギリシャの没落に学ぶ」
252「日教組教育の大罪」
251「台湾の中国傾倒を憂慮」
250「平和と平等への幻想」
249「李登輝講演録3」
248「李登輝講演録2」
247「李登輝講演録1」
246「政権交代」
245「馬政権の人気急落」
244「日本核武装論」
243「オバマ軍縮と東アジア」
242「国家の暴力」
241「民主党政権の誕生で何が変わる」
240「尖閣と日本の国防」
239「米国型格差社会の実態」
238「中国軍拡と覇権共同体」
237「民主党支持が大勢」
236「わが国教育政策の危機を問う」
235「名古屋改革と河村市長」
234「中国に傾く台湾」
233「2010年中国経済の危機」
232「汚れた『清廉』に幕を下ろす」
231「民主党鳩山・小沢の新体制」
230「北ミサイルと中露の陰謀」
229「我が故郷『大満州』」(後編)
228「我が故郷『大満州』」(前編)
227「地検特捜の敗北」
226「資本主義経済の終焉」
225「北のミサイル発射」
224「台湾馬英九政権の実態」
223「小沢安保の是非を問う」
222「小沢民主党の激震」
221「『北方4島』とサハリン」
220「『かんぽの宿』と鳩山発言」
219「霞ヶ関権力の崩壊」
218「米金融破綻後の世界」
217「小沢民主党と日教組」
216「中国微笑外交の本音」
215「米オバマ新大統領への期待」
214「台湾の灯が消える日」
213「今年の日本経済」
212「満州事変と日米戦争」
211「田母神論文・全文掲載(後編)」
210「田母神論文・全文掲載(前編)」
209「中国産食品の農薬問題」
208「神田高校の校長更迭」
207「オバマ新大統領と米国の未来」
206「田母神論文を封印」
205「台湾馬総統の本性」
204「中国解放軍の実態」
203「世界激震、深刻経済」
202「米国主義リーマンの破綻」
201「国交相、日教組発言」
101〜200号
 (2006/10/5〜2008/10/2)
1〜100号
 (2004/10/28〜2006/9/28)


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