−中小・地域金融機関を中心に−
          時局心話會「5月東京時局講演会」(平成17年5月16日)毎月開催
講師/アルベルト・フジモリ 元ペルー大統領
演題/「大統領への道」

 フジモリ氏は日系人の子としてペルーで生まれ、苦学して大学の学長になった。そして1989年、テロとインフレに蝕まれたペルーに革命を起こすことを志して大統領選挙に出馬したのである。対立候補が既に50%以上の支持を集めている中、0.1%の支持しかない氏の挑戦は狂気の沙汰と言われたが、「既存の政治家に政治は任せられない。国民に良い生活を与えなければならない」という理想は変わらなかった。日系人に対する根深い差別の中、ゼロから地道な選挙活動を展開して、1990年に驚異的な逆転勝利を果たしたのである。
 当時のペルーはハイパーインフレ率7600%、国民の栄養失調率43%という窮乏状態であり、テロ組織が政府以上に支持を得ている有様だった。しかしフジモリ政権は任期中にインフレ率を2%、栄養失調率を13%まで縮め、さらに8%の経済成長を達成して、政府に対する国民の信頼を取り戻した。政治経験のない氏がここまで成功を収めたのは、防弾チョッキを着て演説を行い、国境問題解決のため歴代大統領で初めてエクアドルに滞在するという体当たりの実行力、そして「政治家には結果を出すよう要求するべきだ」という徹底した成果主義の賜物である。
 現在フジモリ氏は日本にいて、日本の経済や企業の潜在力に大きな可能性を感じている。いまだ不安要因は大きいものの、その底力で多少の困難は乗り切れるはずだという。ゼロどころかマイナスの状態からはじまり、奇跡的な業績を上げた氏ならではの評価である。
 むろん、ペルーと日本では歴史、風土、国際情勢など大きな隔たりがある。しかし「改革・革命を自らの手で行う」「戦略を持ち、辛抱強く戦い、目標を設定して実現する」という確固たる行動原理の価値は国を問わない。かつて一国を背負った人間としての力と深みを聴衆にまざまざと感じさせる講演であった。